差別の秘密。

近年日本でもヘイトスピーチなるものが話題になっています。関連してレッテルや決め付けが横行しています。これらの秘密を探るブログです。

4.差別の誤解〈2〉承認欲求(自己愛)

ネットで飛び交う相手を黙らせる万能薬。

「お前は承認欲求が強過ぎる自己愛性人格障害だ!」という言葉。

差別を巡る議論でもよく飛び交います。

 

一見、人格障害などに悩む患者さんを差別してるようにも取れますが、違います。

相手の主張を全て無に帰す台詞として、あらゆる立場の人が使ってます。

 

差別者とされてる側も、判差別のためだと述べてる側も、相手の意見を封じる手立てとして投げかけてます。

 

本来、差別であるか差別でないかを、個別の根拠で検証することは、とても知的な検証作業です。私の理由根拠がすべてだ!で押し切ろうとしない限り、正当な作業です。

つまり、理由(承認欲求云々)が妥当かどうか検証するために出されているなら、検証すれば議論が成り立ちます。 

本来検証成立が議論成立条件であるはずなのに、ただただ一方的に決め付けて発されてる時点で、妥当な使い方ではないのは明らかです。

言わば、承認欲求云々はバカバカしいレッテル張りですが、中には専門書を取り出し病気の診断類似行為にまで及ぶ過剰な言及もあるので、きちんと検証して馬鹿な行為だと明らかにします。

 

まず、承認欲求ですが、これはアメリカの心理学者マズローの考えた5つの階層の上から2番目の位置にある欲求を示す言葉です。

現在では、ヒトの脳に5段階のピラミッド状階層なんて実際にはないので、学術的には主流ではありませんが、教育や福祉などの分野で自らを高める認知形成の指針としては、いまだにひとつの指針として重要な役目があるようです。

 

ただし、他者をの内心をはかり、批判するための物差しとして使う例は存在しません。

 

また、承認欲求は競争心と親和性の高い欲求のことです。見方を変えれば、衣装住や安全や愛に恵まれたうえで、より上を目指そうとする競争心が引き起こす様々なこと悩みについて述べられてる項目です。

ところが、「承認欲求」を使う批判者はなぜか、マズローの段階でさらに一段階下の「社会欲求と愛の欲求」つまり、社会的な孤独や周囲に認められてない惨めな状況を引き合いに出します。

この時点で実は、使い方(物差しとして使う)も理解(項目の理解が出来てない)も完全に間違いなのです。

 

ここでは、よりハッキリ理解するためにマズローの二重誤用は横に置いて、その先を説明します。

 

ヒトは社会動物ですから、個体単体では生きていけません。

ドイツの心理学者ケーラーは、チンパンジーの観察で暗闇への反応と孤独の反応が同じ恐怖反応を示すことを発見しました。(kohler1921)

社会動物は群れから長期間離れると生存確率が、かなり低くなります。なので必ず、身体が強く反応して他個体と共に居たい、仲間として認められたいと感じる性質を持ってます。何らかの理由で群れを追われた個体も大抵の場合、小規模の群れを作って暮らします。そうしないと生きていく確率が減るからです。

すなわち、周囲の人に社会生活をしてる仲間の一人だと認められたい気持ちは、誰もが自然に生れ付き持ってる気持ちなので、あって問題はありません。

強くあったとしてもそれが普通です。

むしろ無い方が問題です。

仮に孤独で悩まれてる方が居らっしゃるのであれば、暗闇で怖がってる状態と同じわけです。毛嫌いしたら、ますます怖がらせるだけです。そんなことをしても意味はないです。過度にストレスたまれば、本人と周囲に問題が生じるだけで、良いことなんてこれっぽっちもありません。親しい人や共感できる人は、たまには一緒に遊べば良いし、親しくない人も、意見対立とは無関係なので、わざわざ意地悪なこという必要はなく、そっとして置けば問題ありません。

地域や社会の安定を望むのも、人のもつ普遍的性質ですから、必ず孤独な人を助けようとする人や、そういう制度が必要と動く人がいます。その人たちに任せてください。

割り切って互いに言い合ってる人は、その人たちの責任の範囲で自由ですが、妥当な意見の範疇からは離れた言い合いだと御自覚なさってください。

 

次に、自己愛性人格障害ですが、承認欲求と定義された言葉とは、直接は関連ありません。似た概念の別の言葉とは関係あるようですが、直接関与はないようです。

自己愛性人格障害は現在では正しくは自己愛性パーソナル障害という精神障害のことです。

精神障害とは、政治的、宗教的、性的等の逸脱や葛藤があることではなく、臨床的に著しい苦痛や機能の障害があることだと定められています。

 

元々はDSM(米精神医学会編纂「精神障害の診断と統計マニュアル」)によって、定義された言葉です。

このDSM、第三版で箇条書きで分かり易くする編集方針に変わりました。

分かり易くなったことで、一般の人が箇条書きを当てはめて不適切な判断をしてしまうことが続出しました。

よって第四版では、ここには誰にでも当てはまるようなことが書いてます。しかし、これは生活に支障を来たす患者さんを対象にしてるので、普通の人には当てはまりません。というような項目がつきました。

しかし、それでもなお、一般の人の誤判断が多いので、第四版の改訂版では、この診断マニュアルは、経験豊富な専門家が正式な手続きの基で診断に使用するものであって、一般の人が料理本のように当てはめて使ってはいけない。ということが新たに明記されました。

 

 ここまで念を押した注意書きがある本ですから、ネットで意見が違う人に向けて、突然医療行為のように精神障害を告知することは完全に間違いです。

資格も根拠もない診断ですから、予断です。また、医師法に関する違法行為の可能性もあるし、実際に精神障害に悩む人への偏見を広めることになり兼ねません。

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