差別の秘密。

近年日本でもヘイトスピーチなるものが話題になっています。関連してレッテルや決め付けが横行しています。これらの秘密を探るブログです。

4.差別の誤解〈4〉スケープゴート緩和の一例

差別の誤解〈3〉で、スケープゴートは差別と直接関係ないことを示しましたが、スケープゴートは差別ではないから放置して良いという問題ではありません。

よって、差別の問題とは別枠として、補足的に解決緩和救済への道を考えて見ます。

差別と類似性がある不条理なだけに差別の考察にも役に立つに違いありません。

 

一番肝心なのは、これは誰もが普遍的に持ってる動物としての基本システムだと言うことを十分理解することです。

絶対無くせないし人道的な意味でも黙らせることはできません。

 次に、発生機序(メカニズム)が分かってるので、「原因があって結果がある」ということを理解することです。

ですから、本来、原因(ストレッサー)を無くせば、結果は簡単に変わります。

しかし、高ストレス社会は簡単には解消できないし、ストレスが古来より世界中で普遍的に有り続けるからこそ、進化の過程で生まれた緊急回避システム(責任転嫁システム)が生まれたことを忘れてはいけません。

つまり、現状画期的な解決方法はないのです。

と言うことは、このシステムとどううまく付き合っていくべきか?

このように発想を変えるほうが未来志向といえるのでないでしょうか?

まず、思いつくのは緩和です。

例えば、職場や学校での健康診断にストレステストを義務付ける。

そうすれば、高ストレスの人やなりかけてる人を事前に把握出来るので、ケアが出来ます。

他には、批判主張には根拠や理由を徹底させる社会造り。

反証可能性の低い批判(≒根拠や理由がいまひとつこじ付けのような批判とか噂レベルの批判など)は、不平不満の発露や愚痴に近いのでそっとして置いて大きくしない。

スケープゴートは一回毎に発散される愚痴なので、周囲が大きくしてしまうと取り返しがつかなくなる可能性ありますが、そっとして置けば流される可能性もあります。

「傷つけることを言ってるわけだから、大きくなると取り返しつかないし、無意味で恥ずかしいことを言ってしまった。」冷静になれば気がつきます。

また、発散中の者を注意するのは逆効果ですが、その前後は、落ち着いてるわけです。ですから冷静なときに「我々人間にはこういう共通のシステムがあるので互いに気をつけよう許し合おう」とアドバイスすることも有効かもしれません。

なお、我慢することが身体に良くないのは言われてる側も同様のなので、こういう共通システムを持ってるんだと、社会全体が認識するなら、親しい同士は言い合って後腐れ無しの喧嘩込みで仲良くして行くことを目指すのも良いと思います。

もっと一般的な方法だと、身体を動かすスポーツとか、大きな声を出せるカラオケとか、ストレス発散できる趣味は世の中たくさんありますから、常日頃から趣味の一つや二つが出来るよう、国民の余暇の時間と予算を必要経費のように考える政策なども有効かも知れません。

次いで外せないのが、救済です。

これまでの人権派の人たちは、被害者を意識するあまり、ストレスでいっぱいっぱいの人を、 追い込むことで事態を悪化させてた可能性が高いですが、この誤りを正すだけでは片手落ち。

保護や救済両方揃って始めて妥当な対策になります。

こちらは長年の積み重ねがありますから、「特別な悪い人が行う不条理の被害者」という意識を捨て、誰もが内包するやむを得ないシステム由来の被害者だと気持ちを切り替えて微調整すればスムーズに行くと考えられます。

被害は被害なので、これまで通り、違法なものは処罰され賠償されるべきです。

強いストレスは、海馬などの樹状突起を萎縮させることがハッキリ分かってますから、発散側が保護されるように、被害を受けてる側の者も、健康診断などでケアされるべきです。

そうしないと、被害者こそが加害者になるそれが責任転嫁システムなのですから、うまく機能しないでしょう。

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4.差別の誤解〈3〉差別はスケープゴートの嘘

差別の議論では、よく、差別者はスケープゴートとして、自分のどうしようもない嫌なことを弱者に押し付けてる。それで快感を得て(オピオイドによって、)癖になって繰り返されてる。という人、非常に多いです。

 

これ、絶対的に正しいことだと思い込んでる人が多いようですが、今一度冷静になって考えてみてください。

スケープゴートや責任転嫁は、差別と直接関係ありません。

差別の機序としておおよそ考えられることは「差別のメカニズム」で説明しました。

間違った考えに固まった人向けに、簡単にイメージを説明します。

 

例えば、会社の企画が失敗したとします。

このとき、上の者が下の者に、「責任を転嫁」してすべて押し付けてしまうことを一般に「スケープゴート」と言いますよね。

でも、本当は、企画失敗なんて会社内外の様々な事情が関連して起きることなので、誰々の責任だと断定することは、余程の失態でもない限り不可能です。

 実際、上の者が責められることも普通にあります。

上に向かっても下に向かっても、責任転嫁でありスケープゴートであることに変わりありません。

下から上への多くは、居酒屋の愚痴止まりです。結果的に 弱者が切り捨てられることが目立つかも知れません。ですが、それはスケープゴートの差ではなく、力関係の差の結果です。

力関係は全てのことを強力に装飾しますが、スケープゴートそのものは変わりありません。

仮にスケープゴートを全て無くしても、力関係は相変わらず強力に弱者を蝕むことになります。

力関係は共通項xとして、別枠で考えないと、何にでも強力に影響を与えるので混乱し易いのです。

 

つまり、力関係がスケープゴートの実態を混乱させてる。多くの人は、そこを、整理しないまま教え込まれてるのです。

 

次に、メカニズムを考察します。

実は、責任転嫁は多くの動物が生得的に有してる普遍的行動です。

動物に、回避不能罰刺激を与えるとfreezing(すくみ)を誘発します。

このときストレスで消化器官に潰瘍が起きます。(Sawrey、CongerとTurrell1958)

人も同様で、有名な観察実験「トムの胃」で明かなように、直接対応できないストレスの方が胃潰瘍の度合い(つまりストレスの度合い)は大きくなります。(WolfとWolff1947)

この直接対峙出来ないようなストレスによる胃潰瘍、実は、隣の個体など、その場で目立った何かの目標に向けて闘争(攻撃行動)を起こすこと胃潰瘍が軽減されます。

 

つまり、これが責任転嫁のメカニズムです。

例えば、政府や会社の上層部の決定のように、自分ではどうしようもない出来事が、一番ストレスの度合いが大きい。この場合、抱え切れないストレスとなり胃潰瘍を起こす。けれど、その場で何か目立ったものに、やつあたりをすると、ストレスが解消される。ということです。

まんま差別じゃないかと思う人がいるかもしれませんが、落ち着いてください。

前述のように、これは弱者に向かうものでなく、上でも下でもとにかく目立ったものに向かいます。

アンチ巨人のように、強いものにも向かいます。

アンチ安倍(いわゆる安倍死ね)も、責任転嫁系ストレス発散かもしれません。

 

とは言え、これ、発散の対象にされたものにとっては、差別とまったく同じで、言われのない不条理にさいなまされます。

ですから、緩和措置や救済措置は絶対必要ですが、相手を押さえつけることだけは対処として間違いです。

と言うのも、そもそも、個体にとって我慢の限界が来ての一時的発散ですから、この闘争(攻撃行動)を全面禁止にして、喧嘩出来ない形にしてしまうと、個体は強ストレスにさらし続けられ、完全に参ってしまいます。

緊急避難として認めなければ、本人とそれに伴って受ける周囲のダメージが計り知れないほど大きくなるのです。

 

また、俗説のように、この緊急避難行動としての責任転嫁がβエンドルフィンを分泌しオピオイド鎮痛が起きて、(自傷行為のように)癖になって繰り返されるという主張は完全にデマです。

ストレスは基本的に不快情動回路(A6)なので、逆にノルアドレナリンが分泌され不快感を覚えるので癖にはなり難いです。

逃避不能罰刺激でオピオイド鎮痛が起きる場合は、無気力になった状態です。 (Jackson, Maier, & Coon,. 1979)

つまりfreezingのままで)発散できない人の方に、オピオイド鎮痛が起き、結果的にうつ症状、記憶や学習の阻害などさまざまな障害を起こすのです。

 

ここまでで、反差別界隈の主張する「心の闇=スケープゴート差別仮説」が間違いであることは御理解頂けたと思います。

 

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4.差別の誤解〈2〉承認欲求(自己愛)

ネットで飛び交う相手を黙らせる万能薬。

「お前は承認欲求が強過ぎる自己愛性人格障害だ!」という言葉。

差別を巡る議論でもよく飛び交います。

 

一見、人格障害などに悩む患者さんを差別してるようにも取れますが、違います。

相手の主張を全て無に帰す台詞として、あらゆる立場の人が使ってます。

 

差別者とされてる側も、判差別のためだと述べてる側も、相手の意見を封じる手立てとして投げかけてます。

 

本来、差別であるか差別でないかを、個別の根拠で検証することは、とても知的な検証作業です。私の理由根拠がすべてだ!で押し切ろうとしない限り、正当な作業です。

つまり、理由(承認欲求云々)が妥当かどうか検証するために出されているなら、検証すれば議論が成り立ちます。 

本来検証成立が議論成立条件であるはずなのに、ただただ一方的に決め付けて発されてる時点で、妥当な使い方ではないのは明らかです。

言わば、承認欲求云々はバカバカしいレッテル張りですが、中には専門書を取り出し病気の診断類似行為にまで及ぶ過剰な言及もあるので、きちんと検証して馬鹿な行為だと明らかにします。

 

まず、承認欲求ですが、これはアメリカの心理学者マズローの考えた5つの階層の上から2番目の位置にある欲求を示す言葉です。

現在では、ヒトの脳に5段階のピラミッド状階層なんて実際にはないので、学術的には主流ではありませんが、教育や福祉などの分野で自らを高める認知形成の指針としては、いまだにひとつの指針として重要な役目があるようです。

 

ただし、他者をの内心をはかり、批判するための物差しとして使う例は存在しません。

 

また、承認欲求は競争心と親和性の高い欲求のことです。見方を変えれば、衣装住や安全や愛に恵まれたうえで、より上を目指そうとする競争心が引き起こす様々なこと悩みについて述べられてる項目です。

ところが、「承認欲求」を使う批判者はなぜか、マズローの段階でさらに一段階下の「社会欲求と愛の欲求」つまり、社会的な孤独や周囲に認められてない惨めな状況を引き合いに出します。

この時点で実は、使い方(物差しとして使う)も理解(項目の理解が出来てない)も完全に間違いなのです。

 

ここでは、よりハッキリ理解するためにマズローの二重誤用は横に置いて、その先を説明します。

 

ヒトは社会動物ですから、個体単体では生きていけません。

ドイツの心理学者ケーラーは、チンパンジーの観察で暗闇への反応と孤独の反応が同じ恐怖反応を示すことを発見しました。(kohler1921)

社会動物は群れから長期間離れると生存確率が、かなり低くなります。なので必ず、身体が強く反応して他個体と共に居たい、仲間として認められたいと感じる性質を持ってます。何らかの理由で群れを追われた個体も大抵の場合、小規模の群れを作って暮らします。そうしないと生きていく確率が減るからです。

すなわち、周囲の人に社会生活をしてる仲間の一人だと認められたい気持ちは、誰もが自然に生れ付き持ってる気持ちなので、あって問題はありません。

強くあったとしてもそれが普通です。

むしろ無い方が問題です。

仮に孤独で悩まれてる方が居らっしゃるのであれば、暗闇で怖がってる状態と同じわけです。毛嫌いしたら、ますます怖がらせるだけです。そんなことをしても意味はないです。過度にストレスたまれば、本人と周囲に問題が生じるだけで、良いことなんてこれっぽっちもありません。親しい人や共感できる人は、たまには一緒に遊べば良いし、親しくない人も、意見対立とは無関係なので、わざわざ意地悪なこという必要はなく、そっとして置けば問題ありません。

地域や社会の安定を望むのも、人のもつ普遍的性質ですから、必ず孤独な人を助けようとする人や、そういう制度が必要と動く人がいます。その人たちに任せてください。

割り切って互いに言い合ってる人は、その人たちの責任の範囲で自由ですが、妥当な意見の範疇からは離れた言い合いだと御自覚なさってください。

 

次に、自己愛性人格障害ですが、承認欲求と定義された言葉とは、直接は関連ありません。似た概念の別の言葉とは関係あるようですが、直接関与はないようです。

自己愛性人格障害は現在では正しくは自己愛性パーソナル障害という精神障害のことです。

精神障害とは、政治的、宗教的、性的等の逸脱や葛藤があることではなく、臨床的に著しい苦痛や機能の障害があることだと定められています。

 

元々はDSM(米精神医学会編纂「精神障害の診断と統計マニュアル」)によって、定義された言葉です。

このDSM、第三版で箇条書きで分かり易くする編集方針に変わりました。

分かり易くなったことで、一般の人が箇条書きを当てはめて不適切な判断をしてしまうことが続出しました。

よって第四版では、ここには誰にでも当てはまるようなことが書いてます。しかし、これは生活に支障を来たす患者さんを対象にしてるので、普通の人には当てはまりません。というような項目がつきました。

しかし、それでもなお、一般の人の誤判断が多いので、第四版の改訂版では、この診断マニュアルは、経験豊富な専門家が正式な手続きの基で診断に使用するものであって、一般の人が料理本のように当てはめて使ってはいけない。ということが新たに明記されました。

 

 ここまで念を押した注意書きがある本ですから、ネットで意見が違う人に向けて、突然医療行為のように精神障害を告知することは完全に間違いです。

資格も根拠もない診断ですから、予断です。また、医師法に関する違法行為の可能性もあるし、実際に精神障害に悩む人への偏見を広めることになり兼ねません。

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4.差別の誤解〈1〉このカテゴリーの説明。

これまで「差別とは?」で悪口差別の定義をシンプルにすることの必要性について、「差別のメカニズム」で複雑な概念ではなく単純な身体の仕組みが差別のベースであること、「悪口は攻撃に発展する」で単純な悪口差別が攻撃に発展することを、示しました。

これらは、悪口差別というものが、誰にでも内包してることを示してます。

 

これまでの差別の概念では、差別をする普通ではない悪い人がいるという前提がありました。なので、被害者を救うことを念頭に置いたが為、罰することを重視し、差別だと見なすやいなや差別者とのレッテルを張り、決め付けて批判することが繰り返されてきました。

なので、レッテルや決め付けの中には、明らかにおかしな指摘がたくさんあります。

このカテゴリーでは、これまでの差別概念による決め付けやレッテル張りの間違いを説明します。

 

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3.悪口は攻撃に発展する[6]攻撃行動を起こすストレスは入れ替わる。

悪口は攻撃に発展する[5]が、おおよその群衆が暴動に繋がるメカニズムですが、足りない点があります。

 

それは、危機迫る災害などが起きてない状態での群衆の暴動です。

なぜ、災害が迫ってないのに、同じような情動反応が起きるのでしょう?

実は、ヒトの脳への入力は2つの入力経路があります。

ひとつは、実際の感覚器官から入る入力で、もうひとつは、思ったり考えたことが事実と同じように大事なデータとして入力される「心因性入力」です。

(詳しくはシャクターとシンガーの情動二要因論などのキーワードで検索してください。)

この心因性入力は、認知思考の領域ですから、悪口差別が入り込む余地があります。

もともといざこざがあれば、災害時に情動判断に切り替わったとき、高度な意思が抑制され、押さえてる敵意が剥き出しになることもあるだろうし、軍事訓練のように教育として一定量の情報を教え込まれてれば、災害時でなくとも高ストレスで暴走は起き得るでしょう。

しかし、なぜこうも、攻撃のメカニズムは入れ替わるのでしょう?

じつは、ここに情動二要因論の重要な側面があります。

ヒトは、お腹がすいても、怪我をしても、緊急事態にあっても、心因性入力で悪口差別を吹き込まれても、すべて青斑核という神経核が刺激されます。

そしてノルアドレナリンが放出され、情動反応が起きます。

つまりストレス反応は、すべて同じ神経回路(A6)によって起こるのです。

どう対処するかは、周囲の状況やこれまでの経験から、選択されるので、必ずしも適切なストレス回避行動が起きるとは限らないのです。

例えば、渋滞中いらだって同乗者と喧嘩したとします。

なかなか進まず遅刻しそうでイラつくのか?お腹が減ってイラつくのか?同乗者が嫌いでイラつくのか?完全な正解は分からないのです。

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人は間違って誰かを怒ったり嫌ったりすることが有り得る。それくらいストレス回路は互換性があるのです。互換性というより、全部同じ回路で処理してるので混ざり易いのです。

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3.悪口は攻撃に発展する[5]偶発攻撃のメカニズム

悪口によって攻撃行動が起きる準備は、『悪口は攻撃に発展する[2]』で、攻撃行動開始のきっかけとなる合図は『悪口は攻撃に発展する[3]』で説明しました。

『悪口は攻撃に発展する[4]』で、悪口の訓練や攻撃開始の合図がなくても攻撃行動があることを説明しました。

 

(一応、古来より一般に起こり得る、利害衝突や痴情の縺れ、あるいは積年の恨みのようなものから派生する殺人事件及び、精神に異常のある方の事件は、情報量を抑える意味で、ここでは除外して考えます。)

 

除外事例は別として、通常は、訓練しないと無関係な同類に殺人なんて凶悪なことが出来ないのが、普通の人間。

群集心理は、いったいなぜ、普通の人間が残虐な攻撃行動を、訓練による殺人抵抗のハードル下げや権威からの命令無しに、実行することが出来るのでしょう?

ル・ボンは人々が群集になると

1.道徳性の低下
2.暗示にかかりやすくなる
3.思考が単純になる
4.感情的な動揺が激しくなる

このような状態が生じると分析しています。

 

道徳性が低下するということは、軍事学者らの訓練と同じです。兵士自らが自分の価値を低め、何の価値もない人間だと思い込ませることで、「どうせ無価値な人間だ。悪いことやって構わない。」と悪いこと実行のハードルを下げる。軍事訓練と同じことが起きた状態です。

暗示に掛かりやすくなるということは、軍事学者らの号令の訓練と同じ。権威からの命令や服従の関係が自然と出来上がってることになります。

思考が単純になり感情の動揺が激しくなることは、高度な意思を担当する前頭連合野が抑制され、快か不快かの単純かつ極端な情動判断の扁桃体が優位になることが推測できます。

 

これは、群集というテリトリーを無視した匿名の密集状態の特徴が、軍事学者らの訓練と同じような効果になり、尚且つ、緊急事態の情動反応を呼び起こしてることを意味します。

軍事学者らの研究では、距離感が離れるほど殺人抵抗を下げることがわかりましたが、密集はなぜ傍にいるのに距離感が開くのでしょうか?

生物には群集密度やテリトリーといった他個体との適正な距離関係があります。

この領域を侵されると喧嘩が始まります。

人同士も、知らない人がすぐ傍にいるのは、あまり心地好いものではありません。

打ち溶け合おうとする人にとっても、知らないままが居心地良くないことの裏返しで、半分苦肉の策なのです。

そうでなければ、満員電車や都会の人混みは仲良しだらけにならないとおかしいです。

つまり 不適切な密着である群集はただそれだけで緊張≒ストレスを生み争いが起き易くなります。特に恨みなどもなく喧嘩するわけですから、攻撃行動の準備(殺人抵抗を下げること)が密集ストレスにより、誘発されたのかもしれません。

 

この群衆が暴動に向かうのは、情動反応が起きてることから、緊急事態が迫ってくるからだと考えられます。

緊急時や災害時、一番効率の良い対応手段を探し出そうと、じっくり腰をすえて検証してては、生き残れません。

サバイバルには、冷静も必要ですが、その瞬間ではなく、後から振り返り次への対処として必要とされます。

瞬間的に、心肺機能は高まり四股に血液が流れ、ノルアドレナリンとアドレナリンの作用で、動き出したくてたまらなくなります。

どっちに逃げて良いのかなんて、あまり考える暇もなく、誰かが走り出せば、まるで小魚や鳥の群れが、一方向に流れるごとく、群集は流れ出します。

この統一された行動、難しい言葉で、自己組織化が関連すると思われます。

 

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3.悪口は攻撃に発展する[4]偶発的な攻撃行動。

攻撃行動というのは、号令がなくても存在します。

最初に思い浮かぶのは、弱肉強食の世界ですが、肉食目(ライオンとか虎)が獲物を狙うのは、摂食行動で身体の中では人が食事を取るときと同じ反応です。ですから攻撃行動とはいえません。

 

生物で攻撃行動というとまずは、逆の狙われる側に通じる闘争か逃走」(fight-or-flight response)です。

生物は基本、良いことを増やし悪いことは減らそうとするので、通常危険は避けて逃げます。しかし、追い詰められたときや追い払えると判断したときは、攻撃行動を選び闘争が始まります。

生き延びるあるいはより有利に生き延びようとするわけで、もっともな行動です。

ただ、この攻撃行動は差別と関連が無さそうです。

 

差別と少しは関連ありそうなのが、同種間の生存競争つまり性淘汰と集団競争です。

性淘汰(個体間の生存競争)と社会動物としての群れ同士の生き残りを賭けた縄張り争い(集団間の生存競争)は、それぞれ、生き延びる競争なので純粋な勝ち負けが主役ですが、ヒトは言語を操り心因性入力として風聞風潮も競争に導入することができます。

ここに、差別の要素が入り込む余地がありますが、全体に反映させるよりは例外としてあるいは影響のある要素として別途考察したほうが効率は良さそうです。

 

差別とある程度関連性があると推測できるのが、群集心理での攻撃行動です。

これはル・ボンフランス革命に置いて、普通の人々が残酷な処刑を喜ぶ様子をヒントに産業革命以降の群集化した人々の心理を研究したのが始まりです。

ル・ボンは4つの特徴をあげてます。

1.道徳性の低下
2.暗示にかかりやすくなる
3.思考が単純になる
4.感情的な動揺が激しくなる

有名な事例は、フランス革命、魔女狩りなど枚挙に遑がありません。

今現在(2015/05/06)も、アメリカではボルティモアで人種暴動(2015/04/27)が起きて、その続報が流れてきます。

ここ日本でも、関東大震災のとき、噂によって朝鮮人が殺されたことがありました。

 

これには、予断と偏見や人種差別が関連してそうです。

 

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